グレート百名山3つ


幌尻岳

( ぽろしりだけ) 2,052m 日本百名山
北海道沙流郡平取町・新冠郡新冠町
雄大なカールを有する日高山脈最高峰

体力 :
難易度:
満足度:

(写真: 広大な北カールと幌尻岳)

幌尻岳の紹介
どんな山?

幌尻岳は北海道日高山脈の最高峰で、山名はアイヌ語で大きな(ポロ)山(シリ)という意味だそうです。

どこから登っても山頂までは長い時間がかかり、ルートによっては渡渉も必要なため、日本百名山最難関の山とも言われています。

コース紹介

最もポピュラーで、(ほかのルートと比べれば)比較的短時間で登ることができる振内コースより登頂しました。途中に渡渉(川を渡ること)があり、沢登の技術も必要となる難関ルートです。
登山口の第2ゲートまではとよぬか山荘から出ているマイクロバスに乗る必要があります。途中にある幌尻山荘で1泊し翌日に幌尻岳山頂を目指します。

このコースは少し特殊なコースです。以下の点に注意してください。
渡渉があるため、渡渉の装備が必要になります。
 沢登り用の靴(底がフェルトで滑りにくい)と靴下は必須。ストックがあると安定感が増します。(シュラフ・服など)濡れると困る物はザックの中でビニール袋などに入れてください。
小屋とマイクロバスは完全予約制です。
 このサイトから予約してください。
 混雑する山小屋なので、行くと決心したら早めに予約しましょう。 コースは長いため、脚力に自信のない方は2泊するのが無難です。
小屋では布団・食事は提供されません
 自炊の道具とシュラフは自分で担ぎ上げてください。

登山記録
登山日 2019年7月28,29日
天気 晴れ/雨
駐車場 とよぬか山荘
コース 1日目: 第2ゲート(11:25)⇒取水施設(13:25)⇒幌尻山荘(15:10) / 3時間45分 (CT 4時間40分)
2日目: 幌尻山荘(5:00)⇒命の水(6:20)⇒幌尻岳(8:00) / 3時間 (CT 4時間10分)
     幌尻岳(8:30)⇒命の水(9:35)⇒幌尻山荘(10:20) / 1時間50分 (CT 3時間)
     幌尻山荘(11:15)⇒取水施設(12:35)⇒第2ゲート(14:25) / 3時間10分 (CT 4時間20分)
1日目: 渡渉を繰り返して幌尻山荘へ

とよぬか山荘

登山口へのマイクロバスの出発地であるとよぬか山荘
廃校になった小中学校を宿泊施設として活用しているそうです。
ここに宿泊しなくてもマイクロバスに乗ることはできますが、マイクロバスは一日三便(2019年現在)しかないので、時間にはご注意を。この日は幌尻山荘までの比較的短時間の行程なので、3便目の10:30発のバスに乗りました。

第2ゲート

マイクロバスで林道を走ること1時間弱で終点の第2ゲート。トイレ、登山届ポストもある実質上の登山口です。
プレハブの建物があり、万一最終バスに乗り遅れた場合はそこに泊まってもよいとのことです。居心地は悪くはないですが、あまりお世話になりたくないですけどね。

林道歩き

第2ゲートからはしばらく単調な林道を歩きます。
私が持ってたガイドブックでは、北海道電力取水施設まで約5キロとなっていますが実際はもっと長いです。(いくつかの)地図では、第2ゲートの位置があきらかに間違っているようです。平取中のオフィシャルサイトにある地図が位置的にも正しく、距離も7.5キロも体感的に近い数字です。

北海道電力取水施設

という訳で、思ったよりも長い時間林道を歩いて北海道電力取水施設に到着。
特に何かがある場所でもありませんが、広いスペースがあるのでとりあえず休憩を。
この先からは本格的な登山道になり、さらにその先には渡渉も待ち構えているので、ここで装備を整えましょう。

へつり

取水施設の先にすぐに表れるのが、川沿いのへつり。ここはまだ川を渡らず、この川沿いの崖をトラバースします。写真だとかなり怖いように見えますが、鎖を頼りに、きちんと岩の凹みに足を置いて歩けば、それほど危険ではありません。

渡渉開始地点

道が目の前が川に突き当たって道が無くなり、ピンクのリボンが現れると、そこがいよいよ渡渉開始地点です。

靴を履き替える

渡渉開始地点で、普段の登山靴(左)から沢登り用の靴(右)に履き替えます。靴下も水はけのよいものに履き替えます。登山靴はザックの中に仕舞って渡渉開始!
沢登り用の靴は水通しが良いのと、靴底がフェルトになっていて川底の岩でも滑りにくいのが特徴です。思い切って水の中に入ります!

浅いところを渡る

渡渉、すなわち川を渡るポイントには、川の手前と対岸にピンクのリボンがあります。と言っても、渡る場所がラインで指示されている訳ではなく、リボンの周辺で安全に渡れそうな場所を自分で探す必要があります。
基本的には浅くて、かつ水の流れが速くない場所を選んで渡ると良い感じで歩けました。濡れるのを避けるために岩の上を渡りたくなりますが、滑ったら危険なのと、流れが速い場合もあるので、思い切って川に入って、川底に足を置きます。

深いところを渡る

とはいえ、浅い場所がない箇所もあります。流れが速くない場所を狙って思い切って渡ります。深そうに見えますが、この日の水の深さはだいたい膝ぐらいまで。その人の身長やその日の水量にもよりますが、水が腰まであるようだと危険だと思います。まずは、浅い場所を探して、どうしても渡れそうな場所が見つからない場合は、無理に渡らずに、誰か渡る人が来るまで待つ、諦めて撤退する等の判断が必要になります。

糠平川の渓流

歩いているときは渡渉のことで頭がいっぱいで、あまり景色を楽しむ余裕はなかったのですが、写真で見返すときれいな渓流ですね。
ちなみに、写真に写っている方は同じマイクロバスに同乗していた方で、この日は山荘までずっと同行しました。実は私もこの方も渡渉は初めてだったのですが、人がいるだけで不安感はかなり和らぎますので、できる限り複数人で一緒に歩くことをお勧めします。

最後の渡渉

渡渉の回数は13回だとか15回だとか言われていますが、1回の渡渉に数えるのか、数えないのかよく分からない箇所もあり、次第に何回渡ったのか分からなくなります。。
もう10回以上は渡って、そろそろ終わりかな?と思ったころに、目の前に幌尻山荘が見えて、最後にその前の川を渡って渡渉も終了です。

幌尻山荘

幌尻山荘は少し変わった山荘。管理人はいますが、ほぼ避難小屋といってよいでしょう。
小屋で食事や布団は提供されません。(ただし、ビールは販売されています!)自炊の道具とシュラフは自分で担ぎ上げる必要があります。
小屋の中は寝るだけ。食事は小屋の外で取ります。小屋の周りに青いビニールシートが敷かれてあるので、その上で自炊・食事をします。
また、荷物も小屋の中には持ち込まず、小屋の床下にあるスペースに置きます。小屋の中に持ち込むのはシュラフと服と身の回りの物のみです。
ちなみに、携帯電話の電波は届きません。。

2日目: 幌尻山荘より幌尻岳へ

幌尻岳へ

翌朝、軽く朝食を取って幌尻岳山頂へ向けて出発!
小屋の脇にある小道を登ります。
このコースの核心部は前日の、幌尻山荘までの渡渉です。幌尻山荘から幌尻岳山頂までは特に危険な箇所はありません。

急登

しばらくは、樹林帯の中の急登です。岩場はありませんが、木の根などの大きな段差が連続します。けっこうキツイけど我慢。

ちらっと

樹林帯の中の登りが続きますが、所々に木の間に稜線の景色が見えてきて、この先が期待させられます。

命の泉

標識もある命の泉ですが、ここから歩いて5~10分ほどかかるとか。まだ水もたくさんあるので水は補充せずに先に向かいます。
ちなみに、北海道の生水にはキタキツネの寄生虫がいる場合があり、煮沸せずに飲むとエキノコックス症という難病にかかるのだとか・・・生水は注意しましょう。

絶景!

命の泉から、さらに少し急登を詰めると、ようやく森林限界を超え、日高山脈の景色が開けます!(ちなみにここで久しぶりに携帯の電波も入ります)
さすが北海道。とにかく大きい!
それまでカールといえば、涸沢か仙丈ヶ岳かと思っていましたが、この北カールのスケールは一回り違います。この景色が見れただけでもう70%くらい満足!

戸蔦別岳

近くの山並みの中でも尖っていて一際目を引くのが戸蔦別岳
いつかここも登ってみたいな。

北カールの大パノラマ
北カールの大パノラマ

稜線美1

こういう美しい稜線が見れると、とても幸せな気分になれます。ただただこういう場所を歩くだけで楽しい。

稜線美2

ちょっとガスも出てきたけど、天国の稜線。

お花畑

そして、この山のもう1つの魅力がお花畑。
ちょうど森林限界を超えたあたりから様々な花が咲き乱れます。

お花畑2

それほど広大なお花畑ではありませんが、とにかく種類が多くて、1キロほどの間に何度も足を止められてしまいました!

幌尻岳に咲く花々
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新冠コースとの合流点

お花畑が終わるとちょっとした岩場も出て来て、まもなく南側の新冠コースとの合流点。ここを過ぎると、もう山頂は目と鼻の先です。

幌尻岳山頂 (標高: 2,052m)

そして、待望の幌尻岳山頂、標高2,052メートルに到着!
日本百名山最難関の山に登ることができました!
周りには日高山脈の峰々の景色が広がります。難しいだけじゃなくて、本当に最高に素晴らしい山です!

日高山脈の大パノラマ
日高山脈の大パノラマ

感想

正直に言うと、登る前は百名山最難関という以外のイメージはほとんどなかったのですが、雄大なカール日高山脈の峰々、広大なお花畑、そして思っていたよりも楽しい渡渉と、とても楽しく素晴らしい山でした。遠くて、難しくて、特に本州の人にはなかなか登れない山ですが、一度はぜひ訪れてみてください。

渡渉はやはりスリルがあり最初のうちは緊張しながら歩きましたが、だんだん楽しくなってきます。本格的な沢登りもやってみたくなりました^^

登山情報
アクセス

マイクロバスの出発地のとよぬか山荘は宿泊も可能です。駐車場もあり、トイレや売店もあります。

危険箇所

やはり渡渉が最大の難所。
幌尻山荘から幌尻岳までは特に危険な箇所はありませんが、体力、装備など総合的な登山の能力が問われる山で、百名山最難関と言って間違いないと思います。

他ルート

このルートは実は日帰りも可能です。朝一のバスで第2ゲートに朝5時到着し、最後のバスが出る17時までに第2ゲートに戻ってくることができればですが。。。もしバスに間に合わないと翌日までプレハブ小屋で過ごすことになるので、食料・寝具の装備は必要かと思いますが。

時間に余裕があれば、戸蔦別岳まで行きたいところ。幌尻岳の少し北側には、七ツ沼カールというもう一つの広大なカールがあり、(天気が下り坂だったのと、時間がなかったため)その景色が見れなかったのが悔いが残ります。

最近人気なのが、グレートトラバースの田中陽希さんが歩いた南側の「新冠コース」。渡渉が無いため安全とも言われますが、新冠幌尻山荘まで19キロの林道歩きもあり、体力的には優しくはありません。

もう一つ、体力と技術さえあれば日帰り可能なのが北西方面からの「千呂露川二岐沢コース」。途中に山小屋はなく、コースタイム18時間40分で藪漕ぎもあるコースです。

温泉

とよぬか山荘からはやや離れて、沙流川温泉ひだか高原荘びらとり温泉ゆからなど。

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